違法派遣、偽装請負で過労死した
上段(うえんだん)勇士さんの裁判



 私自身がかつて、「業務請負業」を名乗る会社に勤め、実態はひどい偽装請負の違法派遣で 心身共にぼろぼろになるまで働かされました。違法操業であることを私が知ったことから、 会社側からでっち上げの理由を基に違法解雇され、それを許さず、裁判で闘いました (宇多田ヒカルファンの騒動の際、「本業」と言っていたのがこの裁判のことでした)。 最終的に勝利和解したのですが、今尚、というか、大小問わず「業務請負業」を 掲げた違法派遣の会社が成長しています。どんなに違法派遣を労働省(今の厚生労働省)に 訴えても政府は見て見ぬふり。野党からの国会質問にも大臣や官僚の答弁はのらりくらり。 大手労組の弁護士は「違法派遣、偽装請負については政治問題なので関る気はない。」と 被害者である労働者を突き放す。私の裁判の裁判官は「(偽装請負の蔓延する現状について) これで良しとする業界だから仕方ない。」と、違法操業を公認する始末。こんな逆風の中、 私と同じように苦しんだ上段勇士さんは「自殺」という悲劇的な最期を遂げました。

 しかし、彼のお母さんである上段のり子さんは現実に屈しませんでした。我が子の 自殺が「過労死」というものであることを突き止め、派遣元(ネクスター(アテスト。本社名古屋市))と 派遣先(ニコン(東京都千代田区))を相手に、無権利状態に置かれていた彼に替わって 両者に損害賠償を求める裁判を東京地裁に起こしました。

 長い裁判手続きの後、2002.10.24に公判開始。裁判はマスコミの注目を集め、ついには 野党の追及に対する国会答弁にて厚生労働大臣から「違法派遣(派遣元ネクスター、 派遣先ニコンの共同違法行為)であった」との画期的な認定発言が出て、 そしてこの度(2005.03.31)、「偽装請負であったかどうか」には直接言及は無かったものの、 派遣元のアテストのみならず、偽装請負の派遣先としてのニコンの使用者責任を実質的に認める 勝訴判決がでました。これまでの皆様の御支援、御協力に感謝いたします。

 認定額が低いこと(請求額1億4400万に対して2400万しか認めず)で「敗訴か」と お感じになる方も多いと思いますが、現在の司法の一般的な「命の値段」としては、 彼の学歴(大学中退)と独身子供無しであることから自動的に算出される額としては 6500万円程度を出しており、特に他の判例と違いがないこと。更に遺産相続する離婚した 両親の片方に対する認定額がその半分になることという事情もあって、充分に「勝訴」という 結果であると言えるものとなっております。

 現在、1審の原告・被告双方が控訴し東京高裁で更に裁判が継続しております。 詳しい経過、今後の裁判日程は下記の原告HPにて報告をしておりますので どうぞ今後も注目・ご支援をお願い申し上げます。


ONODA Takeshi's HomePageトップページに戻る